僕の髪が肩までのびて

そうだ、思い返せば二年前になるだろうか。

あの夜はすごく暇だったんだ。
退屈な闇からの脱却、刺激への欲求。
あの時君は若かった。

ただでさえ、髪が短すぎて、何もかぶっていないのに、
ベレー帽に間違われるという災難に見舞われていたにもかかわらず
夜中にバリカンを買いに行き、見事に刈り上げた。

そして刈ったほうがカワイイとそそのかした当時の彼からは
刈り上げた直後に『ロンゲが好き』とびっくり仰天発言を頂いた。
そして当時、売り子として人様の前に出ていた私は、
病気なのに一生懸命働く坊主の子と同情され、
各々の優しい推測により、違う意味でお客様の心をつかんでしまった。
だけどそんなことはどうでもよかった。
私は売り上げよりも髪の毛を伸ばしたかったのだ。


その時からだった。
私がロンゲを目指したのは。
青年は荒野を目指す。
そんなことはどうでもいい、
とにかく髪をくれ。
とんでもないアナーキーだ。


何があっても伸ばして、
かんちゃん=ロンゲ。
『かんちゃんの髪の毛やべぇよな~』
『俺さ、ふゆちゃんのその髪ずっと触りたいって思ってたぜ?』
フワっとかおる髪、そして抱きしめられる私。
そのシュチュエーションだけを求め伸ばしていた私。


が今。
完全に私のこの髪型は方向性を見失っている。
ショートカット時代の脱色、染色、挙句の果てにはドレッド、ブレーズ。
髪に対してとことんドエスを貫いてきた私。ひとりSMショー。


そして今、髪からの逆襲をうけ、彼らはまったくゆうことを聞かない。
それでもあの時の屈辱をタイタンよりも忘れない。
これまで見てきたもて女子の共通項であつロンゲ。

私も髪をくるくるしながら上目使いで話したい。
ミルクティーが似合う女子になりたい。
時間が解決してくれる。
そう、そう言い聞かして私はのばし続けていた。



がしかし、そんな時だ。
髪をおろした私を見て愛する彼は言った。
『髪を下ろしているとヤマンバみたい。』

時がとまる。
そして私は考える。

はて。
彼はあべこべクリームでも塗ったのだろうか。
まるでカワイイといわない。

ばかな。
いくら痛んでいるとはいえ、私の髪はロン毛目前。
ふゆちゃん人生最長ヘアーだ。
ばかな事をいうな。
はっはーん、照れてるわけか。
照れてるの?
そう聞こうと思ったそのとき。
そう、そのときだ。

『ダメだ!』

彼は叫んで目をそらした。
うむ。うむうむ。

ダメだ、じゃあダメだ。
おい!じゃあダメだよ!!!
ぜーんぜっんだめ!
だーめだーめだめだめ人間!
にんげーん!



さよならさよならさよなら

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